6年前より明らかにリラックスした表情のモウリーニョがトンネルから現れたとたん、スタジアム中から割れんばかりの拍手が起きました。いやもう、拍手というより、「お帰り!」「待ってたよ!」「大好きだよ!!」「よう帰ってきてくれた!」という、エネルギーの塊です。ビンビン感じました。
モウさんはいったん、ベンチに座りましたが、スタジアムからの歓迎コールがやまないのを見て立ち上がり、声援にこたえました。そのあとの彼の表情は、押し殺してはいたものの、感激がにじみ出ていたように見えました。
ストイックなまでに勝利にフォーカスした男モウリーニョですら、やっぱり愛されたいんだ。そして、いろんな経験を経て相思相愛のクラブにまた戻ってきたんだ。
そう思うと、普通の人からすればアホみたいだと思いますが涙がじわーっと出てきました。もう少しで嗚咽すら出そうでした。
私たちがどんなにモウさんを愛してたか。
そのモウさんはどんなに私たちを愛してたか。
言葉なんて要りませんでした。
試合後、モウさんは「君たちが私を愛していることは知っているから、もっと選手の名前を呼んでやってくれ」と言ったらしいですが、それは照れ隠しの一環だと思っています。
私がモウさんを好きな理由は、正直であること(心理戦は除く)、そして戦術がシンプルで分かりやすく素人にも納得がいくこと、目的がはっきりしていることです。
この日のメンバーは
ツェフ;イバノビッチ、ケーヒル、テリー、コール;ラミレス、ランパード、デ・ブライネ、オスカール、アザール;トーレス
サブ:シュウォーツァー、エシアン、ファン・ヒンケル、シュールレ、マタ、デンバ・バ、ルカク
です。
体調が万全でないマタがサブになり、アスピリクエタや怪我のルイスを除くと、格下相手ですがほぼベストメンバー。それに、ローンから帰ってきてみんなからの期待の大きいルカクやデブライネなども入っていますし、新加入のシュールレやファンヒンケルもいます。
リストを見ただけで大きくうなずきました。「うーん、モウさんやっぱわかってる!」
出さなきゃいけない選手、ファンが見たい選手、すごいいいバランスで名を連ねてるじゃないですか。
ルーニーがどうなるかはさておき、選手層は結構厚い状態なので、これからどんなふうにローテーションで使っていくのか、はたまた「アンタッチャブル」体制で行くのか。いずれにせよ、個性の強いチェルシーの選手たちを籠絡してまとめあげたモウさんならうまく使っていくことでしょう。
何か大きく変えたわけでもあるまいに、この日のチェルシーには唸るような勢いがありました。特に前半。
やっと歯車がかみ合って開幕戦を迎えた、というやる気が選手たちの背中をどんどん押していました。
ハルなどひとたまりもありません。
大量得点こそなりませんでしたが、「やっぱりモウさんはやってくれる」という安心感を見ている者に与えるに十分な試合運びでした。
特に。
前回のモウチェルシーといえば、守備の硬さとカウンターの正確さに定評がありました。
1点取ってしまえば、あとはどうにでもなると安心していられるチームでした。
モウさんが離れてから、後ろがどんどん不安になっていったのですが、この日は特にテリーが奮闘。イバちゃんもケーヒルもでしたが、ヘディングでどんどん跳ね返す。
「1-0の試合の、何が面白い」という意見があることは知ってます。もちろん、客観的に言えば「3-2」「4-3」といった試合の方がエキサイティングでしょう。
しかし、それは「ファンじゃない第三者」の見方です。
敵のセットプレーを安心して見ていられることが、どれだけファンの心に安らぎを与えるか。それも、一時は外されそうになってたテリーがまさに
火の出るような守備を見せていました。
やっぱりキャプテンはこうでないと。
彼は常に燃える男ですが、さらに彼を燃え立たせたのはモウさんに間違いありません。
新監督が来たばかりで先行きが不透明なマンチェスター2チームをしり目に、チェルシーを優勝候補だとする意見は少なくありません。
でも、私は今季、そこまで望んでいません。
モウチェルシー改の完成に時間をじっくり使ってほしい。そして、移籍市場でモウさんの思うミッシングピースを獲得することで、より洗練したチームにしていってほしい。
その先で、オーナーもファンも求めるような、安定した名門チームが誕生するでしょう。
明らかな結果はそれからでいいと思ってます。
CLを制覇した今となっては、焦って達成しないといけないものは何もないのです。
とにかく今は、モウさんが帰ってきたことだけで目がうるうるです。
モウさんお帰り。そして私の大好きなチェルシー、こんにちは。