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2008.03.30

第7章 (1)Getting the bullet

 今こつこつとThe Italian Jobを読んでいますが、おもしろいところだけ抄訳してみることにしました。



 全体としては、ビアリがイタリアとイングランドのサッカーの違いをいろんな角度から比較しています。今回取り上げる第7章は、監督についての話です。
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 監督経験者からもっともよく聞く不満は、仕事に安定性がないことである。クラブの会長らによる監督の解雇はしょっちゅうだし、何よりチームの不振はすべて自らの責任になってしまう。
 クビになった監督は、十分な時間が与えられなかったと不満を述べる。これらの点においてはイタリアもイングランドも同じで、その結果も似通っている。成績不振のチームのファンは監督のクビを求めるくせに、実際クビになると、監督のことが気の毒になるのである。

 イタリアとイングランド、どちらが監督の解雇が頻繁に行われているのだろうか。
 2000年8月から2004年6月までの4年間について両国の上位2部について調べたところ、アレックス・ファーガソンや、オセールで40年以上監督をつとめたギ・ルーのようなケースは非常にまれである。
 4年間を通じて常にプレミアシップかチャンピオンシップに所属した36チームのうち、監督を1度も変えなかったのは11チームのみ。率にして30.6%である。
 これが高いか低いかは、イタリアと比較してみよう。
 同期間中にセリエAかセリエBに残った29チーム中、監督が変わらなかったのはなんと3チームのみ…ローマのカペッロ1、キエーボのルイジ・デル・ネーリ2、ペルージャのセルセ・コズミ3だけである。これは率にするとたったの10.3%、イングランドの3分の1でしかない。
 この数字からみて、イタリアの方がより忍耐がなく、とっとと監督の首切りをやるということが簡単にわかる。これを書いているのは2006年だが、上記の3人はすでに上記チームを離れている。
 一方イングランドでは、11人の監督のうち6人がまだ2000年当時と同じクラブで指揮を執っている。その6人とはアレックス・ファーガソン、ダリオ・グラーディ(Crewe Alexandra)4、アラン・カービシュリー、サム・アラダイスとアーセン・ベンゲルである。

 同じチームで長期政権を敷くのはどういったタイプの監督なのだろうか。
 成績を残せなければクビになるのは言うまでもないが、成績を残し見事な手腕を見せたら見せたで、ほかのチームからお声がかかる可能性も高くなる。これが、イタリアのチームで同じ政権が長く続かないことの理由である。
 イタリアでは、成績を残した監督はほかのチームに引き抜かれる。それに対して、イングランドでは同じチームで仕事を続ける監督が多いというのは、上位チームに引き抜かれる機会がイタリアほど多くないからである。
 イタリアでは、トップ5チーム(ローマ、ラツィオ、インテル、ユベントス、ミラン)では延べ15人の監督を雇っている。これに対し、イングランド(アーセナル、チェルシー、マンU、リバプール、ニューカッスル)では5人である。

 イタリアでは、4年間に起用した監督の数は平均で4.7人と、1年に1人以上変わっている計算。一方のイングランドではこの数字は2.8人となる。
 しかし、ここで考慮しなければならないことがある。
 イングランドではシーズン中にほかのチームへ移籍してそこで監督に就任することが認められているのに対し、イタリアではこれが規定に違反するのである。つまりイタリアでは、シーズン途中で解雇されても、次のシーズンまで新たな監督のポジションにありつくことはできない。
 ということは、イングランドのほうがイタリアよりはるかに監督のすげ替えが簡単なのだ。
 にもかかわらず、イタリアのほうが監督の交代が頻繁なのである。

 同期間中にセリエAからBへ降格したチームは12あり、降格中にすべて監督を変えている。
 一方イングランドでも12のチームが降格しているが、このうち監督を変えたのは半分の6チームに過ぎない。降格後も、6チームは同じ監督を使い続けたのである。

 イタリアではどうして監督の見切りをつけるのが早いのだろうか。
 これに対するCoverciano AcademyのFranco Ferrari氏のコメント。

イタリアでは結果しか見ないからだ。われわれは経過など気にしない、結果がすべてである。
負けたら「コイツはバカ」とレッテルを貼られ、それでおしまいである。
良いサッカーをするとか、将来のためにチームを作り上げるとかそういうことは問題ではない。とにかく勝たなければならない。それがメンタリティなのだ。
ほかの国ではその逆である。勝つことだけでは満足できない、勝ってさらに良いサッカーをしなければならない。

 そのとおり。イタリアサッカーの不条理を説明するのにこれ以上の説明は考えられない。
 イタリアでは、スクデットを取った者が勝者で、それ以外はすべて敗者である。
 そこにある性急さ、勝たなければならないという強迫観念はあまりに強すぎ、そのためなら会長らは平気で、気まぐれに監督のクビを飛ばす。
 カリャーリは2005-06シーズン、11月までになんと4人の監督をとっかえひっかえした。むしろ、会長は本当は選手を全員挿げ替えたいのだがそれができないので、監督の首を切ることで憂さ晴らししているのではないかと思えるほどだ。
 この状態は論理的でもないし、サッカーにとって良いことともいえない。監督がシーズン途中で変わるかもしれないとわかっている選手はどういう気持ちになるだろう? そんな選手に対応しなければならない監督はどうしたらよいのだろう?

 これに比べ、イングランドでは比較的職の安定が保証されている。とはいえ、下部リーグを中心に状況は変化している。
 ウォーリック大学の調査によると、ここ9年間でイングランドのチームのうち6割が監督を変えているという。プレミアシップになるとこの数字は低下し、25%になる。
 League Managers AssociationのJohn Barnwell会長によると、その理由は2つあるという。

1つ目は、単にクラブが監督の選択を間違えたということ。もう1つは、あまりに多くの監督らがきちんと準備をしていなかったということだ。
われわれは、「必要なものはひとつ残らず、それも今すぐに手に入れなければならない」という時代に生きている。忍耐は失われ、すべてがすぐに良い結果をもたらされなければならない。周囲にはインスタントコーヒーやファストフード、インターネットなどがあふれている。誰もが待つことを嫌がり、時間をかけて成長することを嫌う。クオリティなど、忘れられた過去の記憶である。
多くの若い監督が、十分なスキルを持たないままで舞台に上がり、去っていった。私はとても気の毒に思う。
サッカーはそのプレッシャーの大きさゆえに、とても脆弱なものである。
誰もが監督を批判してやろうと待ち構えている。そして彼らの多くが、よくサッカーを知らないのである。


  1. 現在イングランド代表監督 [back]
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  4. お写真などは「おやじの花園」を。http://superblackcats.hp.infoseek.co.jp/oyaji/oyaji/oyajinohanazono.html [back]
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